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暴走おじいさん――前編。

皆さん、どもども。
うつを背負って人生ヒルクライム中のオペラです。

草木も眠るある日の丑三つ時、私はあるおじいさんと出会う羽目になった。
”羽目になった”というのは、その出会いが必ずしも好ましいものではなく、むしろこのままお互い無関係のままいられればそれに越したことは無かったという非常に後ろ向きな意味を含んでいる。

「ドッーーン!!」
始まりは開戦を告げる一発の砲撃のような音だった。
「そろそろ眠剤飲んで寝ようか」ちょうどそう思っていた矢先にマンションの駐車場からその轟音は聞こえてきた。
何故か嫌な予感しかしなかった私は、この寒い中わざわざ様子を見に行くために外に出た。
そして私は見てしまった。
右前部分が完全に破壊されている愛車の無残な姿を。
ヘッドライト、バンパー、フェンダー、ついでにその衝撃で右Aピラーまで。
数秒間、私はその場に茫然としたまま動けずにいた。寒さも忘れて。
暫く経って我を取り戻した私がまず気付いたのは、隣の車のエンジンがかかったままであるということと、その車内の運転席にうなだれたままじっと座っているおじいさんの姿だった。
この時私は全てを理解した。
コンコン。私は車の助手席側の窓をノックした。
すぐにパワーウィンドウが降りた。
「ここ、当てましたか」
「はい、すいません」
その後しばらく二人でうなだれていたのは言うまでも無い。

実を言うとこのおじいさん、私は前から気になっていた。
とにかく日増しに彼の車には擦り傷とか凹みが増えていく。
さらに不可解な事として、彼はよく車の中でエンジンをかけたまま眠っているのだ。
しかしこの後、これらの謎は全て解けることとなる。全く知りたいとも何とも思っていなかったのに。
おじいさんの話によると、彼はたまに下半身に力が入らなくなるのだそうだ。
彼の車が傷だらけなのも、運転席でじっと眠ったままだったのも全てそれが原因らしい。
私は思った。「そんな状態で車運転しようと思うかっ、普通!!」
いくら通勤に必要とは言え、これはもう限りなくテロに近い犯罪なのではないだろうか?
ちなみに彼は私の車にぶつける直前にもガードレールに突っ込んだらしい。
つまり彼はその夜、一度事故った上に下半身に力が入らないまま車を運転してマンションまでたどり着いたという訳だ。
私は思った。「そりゃぶつけるわっ!!」

ここまででも十分すぎるほどのスペクタルを堪能させて頂いた私なのだが、話はそれだけでは終わらなかった。
なんと彼は保険に入っていなかった。
私は思った。「どんだけスリルに飢えているんだ、あんたは!!」
一応私の保険会社にも相談してみたが、このような場合個人対個人での話し合いになるという事だった。
つまり私自身でこのおじいさんから修理代を捻出させなければならないという事である。
「とりあえず明日車をディーラーに運んで修理見積もりの依頼して、それからまた改めて考えよう」
私はおじいさんに肩を貸して部屋まで運んだ。
「○○さん、病院行った方が良いと思うんですけど。救急車呼びましょうか?」
流石にこのまま放っておくのは気が咎めたので私はおじいさんにそう訊いてみた。
「いや、大丈夫です。放っておいてください」
おじいさんは間髪を入れずにそう答えた。
その夜は一旦解散した。集合した覚えはないが。
相変わらずうまく眠れない日々を送っている私は、もちろんその夜一睡もできなかった。

修理見積もりは約50万円だった。
整備士さんは「これ本当に駐車場での事故ですか?」と、その破壊の派手さに首をひねっていた。
恐らく状況から鑑みるに、ノーブレーキ&アクセルオンで突っ込んだのだと思われる。
私はおじいさんに見積もりの件を報告するべく彼の携帯に電話をかけた。
「すいません、見積もり書が出たのでこれから持って行きます。いいですか?」
「はい、でも足が動かないので玄関に出るのに時間かかると思います」

その前にまず彼の部屋のチャイムが壊れていて鳴らなかった。
玄関ドアをノックするものの返事はない。
しばらく待っても出てこない。
更に10分ほど待ってみたが出てくる気配も感じられない。
思い切ってドアを開けてみた。
開いた!
「入りますよー。失礼します」
見るとおじいさんが部屋と廊下の境目でうつ伏せに倒れていた。
「大丈夫ですか!」
「あぁ、大丈夫です」
おじいさんの弱々しい声が辛うじて耳に届いた。
「救急車呼びましょうか?」
「いや、大丈夫です。放っておいてください」
何度か確認したが彼はかたくなに病院に行く事を拒んだ。
この時、愛車を破壊された衝撃で眠れないまま一夜を明かし、そのままディーラーやら保険会社やら一気に忙しく動き回った私もその場に倒れそうだったのは言うまでも無い。

「○○さん、身内の方とかいらっしゃるんですか?」
「いや、誰もいない。独りや」
「じゃあお仕事は?」
「立ち仕事ばっかりや。もう辞めなあかんわ」
「年金はもらってるんですか?」
「あぁ、もろてるよ」
なんか雰囲気的に修理代50万ですとは言いにくくなった私は、そのまましばらくおじいさんの様子を窺っていた。
しかし部屋の中は恐ろしく汚れていて臭かった。
家の中のはずなのに、そこにはホームレスのような生活環境が再現されていたのだ。
「この人、修理代払ってくれるんだろうか?」
室内ホームレス環境、そしてうつ伏せの独居老人。
私は眼前に展開されている地獄絵図に、再び嫌な予感を覚えるのだった。
もしかしたら後編に
……続く。

最後まで読んで頂き、感謝、感激です。
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